1993年3月20日土曜日

ビザール INC 「エナジーク」


フリーキーなTECHNO-RAVEからラヴリーなDISCO-TECHへ
これがビザール・インクのエナジー・ディスコティーク!

  いきなり極私的なお話で恐縮なんだけど、昨年の秋頃、トニー・ハンフリーズのCDを制作した佐藤&杉沢両氏に呼ばれてパーティーのDJをやらせて頂いた時のこと。結構夜も更けてクラウドもダレはじめた時、佐藤研さんがそれまでのステディなガラージ・ハウスから、何ともテクノな、でもすっごく黒くウネるインストものにチェンジしたんです。ワォ、格好いいってDJブースでクレジットを確かめたらこれが何とハッピー・マンデイズのシングル。この一曲で僕、目覚めちゃいましてねぇ。初めてシカゴ・ハウスを知った時みたくレコード屋さんまわりしたら、テクノ・ビート+ディスコ・フレイヴァーな、近未来っぽくて、でもどっかラヴリーでレトロなマンデイズタイプのサウンドはちょっとしたブームになってたみたいで、そのテが続々と見つかるんです。

 このマンデイズのシングルをリミックスしたのがテリーファーレイ&ピート・ヘラーのバレアリック・チームだったので、同じくUKバレアリック・シーンの親玉、ポール・オークンフォードが手掛けたELISAの「LOVE VIBRATION」ってのを最初に買ったらこれが大当たり。それからはCOCO STEEL & LOVE BOMBの「YOU CAN'T STOP THE GROOVE」に、ノマドの新曲(バーバラ・ペニントンのカヴァー・ディスコ!)、ヘヴン17までがBROTHERS IN RHYTHMをリミキサーに従えてDISCO-TECHしてたり、ついにはあのブラン・ニュー・ヘヴィーズもDAVE LEE(JOEY NEGROの方が解りやすい?)ミックスによるレトロ・ディスコなヴァージョンを作ったり。そして、ダメ押しの輸入版I-D誌「AGE OF D」(DISCOの時代)と云う特集。レイヴ・パーティーでキレまくってたロンドンっ子の移り気は今、ディスコ。刺激の強いハードコア・オンリーから、それらテクノのトゲと昔のディスコものが発してたいかがわしくもラヴリーなノリをミックスした世界こそがINNらしいのだ。

 で、さっそく。僕はダンスもの雑誌「PUMP」から依頼されてたコラムのタイトルを"MAGIC TOUCH DISCO-TECH"とさせて貰った。第一回目のレヴューは勿論ビザール・インク。そして程なく彼らの日本盤発売の知らせ。そしてついには今週付ビルボード・クラブ・チャートでC+Cのニュー・プロジェクトを抑さえて堂々の1位。USでも成功してたんだね。頑張れ、ビザール・ディスコ!

 このアルバムの話をしよう。スリーヴをみて頂けば解ると思うけど、このアルバムは前半部が、レーベルメイトのEONのミックスを含む1991年のマンチェスター録音。僕がひつこい位にDISCO-TECH!と指摘しているのは6以降の後半部で、92年ロンドンで録音されている。つまりはレイヴ・シーンの花形として活躍していた時期から、もう一歩進んだコンセプトを得るまでの歩みをスッキリと打ち出してみせた訳だが、全篇後半部の勢いで占めてほしい僕には納得のゆかない選曲でもある。これに対しメンバーのディーンは"レーベル側がそうしてほしいって云ったから"と淡白でちょい残念…。逆に全曲、前半部のようなハードコアを期待した昔からのファンもしっくりいかないんじゃないかな。デビュー当初の彼らってまさしくレイヴ・テクノの始祖だったしね。ハードコア・テクノは彼らからはじまったと云っても過言じゃない程の過去を彼らはもってるのさ。

 カール・ターナー、ディーン・メレディス、アンディ・ミーチャムの3人から成るビザール・インクは89年、スタフォードで結成されている。「イギリスで最も退屈な街」と云うここでディーンは現ALTERN 8のマーク・アーチャーと知り合い、4人はビザール・インク最初のヒット「TECHNOLOGICAL」を作る。しかし、マークの余りに芝居がかったKLFもどきにヘキエキした3人はすぐさま彼と訣別。「スタフォードがテクノ・シティなんて言う奴もいたけど、それはマークん家のベッドルームだけの話さ」続いて彼らはレイヴに陽性なノリを織り込んだ「IT'S TIME TO GET FUNKY」「SUCH A FEELING」をヒットさせるが「エナジーク」→ENERGY DISCOTHEQUEと云うコンセプトからズレてしまった上記3曲は本作に収録されていない。それにしても、ハードコア・シーンの牽引車だった彼らがUSアンダーグラウンド派もまっ青のソウル・テクノ(?)でアルバム・デビューを果たしたのは何故?

「どんなに成功したって俺達はアンダーグラウンド・ピープルを忘れない。アンダーグラウンド・シーンのパワーは俺達の基本だからな」とアンディ。

「俺達はこのアルバムで自分達自身のアンダーグラウンド性を上手くアピールできたと思うよ。テクノからディスコまで、見事にクロスオーヴァーしてるだろ?アンダーグラウンドはサウンドのスタイルじゃない。スピリットなんだ。」とカール。

 どうやら彼らのテクノから今日の姿までの転身は、クラブやレイヴの熱気を充分に吸い込んだ彼らならではのスポンティニアスな姿勢によるものらしい。前述のテリー・ファーレイやポール・オークンフォードも今でこそレーベル・オーナーやNO.1プロデューサーだけど、元々はイビザ帰りのパーティー大好き青年。現場の空気を吸ってる奴らは本当、早いなぁ。流行先取型遊び人の君、今月からカー・ステにはJリアナと、DISCO-TECHネタもよろしく!

 さて、スペースの都合もあり全曲についてコメントは出来ないのだけど、USでも大当たりの6でビザール・ディスコにハマった人には是非8 9 10そして11の繰り返しプレイをすすめる。テクノ好きなガールフレンドと一緒なら1~5だろうけどね。あと、このテのサウンドをもっと追及したい人は、AVEX TRAXのCDを買いあさって下さい!

[1993.1.15 本根 誠]

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