1992年4月23日木曜日

VARIOUS 「THE BEST OF TECHNO TRAX TECHNO HOUSE REVOLUTION」


イマドキノ テクノガ オモシロイ

 すべてはロンドンではじまった…。
ロンドン郊外で非合法に開かれる
シークレット・テクノ・パーティー"レイヴ"の誕生が、風向きを大きく変えたのだ。
88~89年にかけてロンドンで猛威を振るったアシッド・ハウスは、
ケミカル・ドラッグ「エクスタシー」との結合で加速度的にその流行の速度を増して行った。
 「エクスタシー」はサイケデリック・フラワーズのころ
隆盛を究めた「LSD」とは完全に異質なモノだ。
 「LSD」が強い幻党症状を起因させるのに対し、
「エクスタシー」はあくまでも現実認識は行える限界ギリギリの快楽追汲型ドラックなのである。
つまり「LSD」の常習者に幻覚ゆえの被害妄想から殺人などを犯してしまう例はあっでも、
「エクスタシ」ではいっさいない。
そこに存在するのは、「しあわせ」感だけなのである。
 
この「エクスタシー」抜きにしては語れないのが、"レイヴ・パーティー"である。
慢性的なリセッション(景気後退)に喘いでいた若者たちを中心に、
週末あるポイントで秘密結社的に集まる"レイヴ・パーティー"への支持が高まっていった。
このパーティーこそがヨーロッパ・エリアのダンス情報発信基地となり、
アシッド・ハウス以降、重要な位置を占めていくのである。

テクノ勃発

 ベルギーで発生したテクノ・ムーブメント「ハードコア・テクノ」「デス・テクノ」によって、
世界中のダンス・マーケットが一変してしまった。
アシッド・ハウスの洗礼を受けたベルギーは、
ニュービートと呼ばれた独自のテクノ・ハウスを開発した。
日本では「ボディー・ビート」とともに愛されたこのニュービートは、
ジャーマン発ハンマー・ビートをよりテクノ・ハウス化した最終サウンドだと評価された。
 しかしニュービート(もしくはボディー・ビート)
ハードコア・テクノ(もしくはデス・テクノ)という構図は、決して直結しては成立しない。
なぜならドラッグ(エクスタシーのような)を媒介として形成されたレイヴ・カルチャーと
密接に関係することで、はじめて「ハードコア・テクノ」はその市民権を得たからだ。
 ちょっと前までなら、ハウスやテクノといえばクラブと相場が決まっていた。
特にロンドンのクラブでは、何曜日であろうとその内容さえ面白ければひとは集まってきた。
しかしサッチャー政権化でより厳しくなった警察当局の取締りを逃れるため
クラブは地下へと潜状していく。
そして、さらに事態は悪化した。
ジョン・メイジャース首相になって好転すると思われた経済政策の破錠である。
これはナイト・クラバーにとって、結果的に大きな打撃を与えることになってしまった。
お金を持てないクラバーたちにとってクラブの入場料はあまりに高く、
週に何回も足を運ぶことなどできなくなってしまったのだ。
これはロンドンだけではなく。イギリスの、ヨーロッパの、
ひいてはニューヨークでも共通していえることだ。
 しかし不景気になればなるほど流行するのもまた、クラブ・サウンドなのである。
ワンナイト・クラブ一回分のポケット・マネーを、
彼らは"週末のレイブ・パーティー”と"エクスタシーの購入"にあてる。
一昼夜、巨大なサウンド・システムから発射される
ハードコア・テクノやデス・テクノの絨毬爆撃を、カラダいっぱいに浴びながら踊り続ける。
人里離れた郊外の牧場や草原をシチュエーションに、レザー光線が会場に飛び交う。
テクノとガラージュをスピーディーにミックスしていく「DJ」は、ここでば"神"以上の存在だ。
手をあげ、鳴り物を吹きならし、
狂ったように踊りまくり、やがて本物のエクスタシーを迎える。
「しあわせ」の絶頂の瞬間だ。

 ここに収録されたテクノは、どれも大ヒットを記録した秀作である。
「エクスタシー」服用時に最も効果がある、
ドラッギーなハードコア・テクノ~デス・テクノのベスト・セレクションといえるだろう。

 ここで「ハードコア・テクノ」と「デス・テクノ」の分別法についても解説しておこう。
ハードコア・テクノとは一般に、
90年後半~91年夏にかけてリリースされたテクノに多くみられる。
この中には、808ステイト「キュービック」、ジョーイ・ベルトラム「エナジー・フラッシュ」、
シージェイ「ケット・ビジー・タイム」など、
シンプルな構成ながら気持ちよくトランスさせるチューンが分類される。
 この流れをより過激にしたのが、デス・テクノだ。
T99「アナスターシャ」、キュービック22「ナイト・イン・モーション」、
LAスタイル「ジェームス・ブラウン・イズ・デッド」をはじめ、
これ以後に多くみられる暴力性・残虐性を増したテクノがそれだ。
肉体の極限まで爆音が導いていくデス・テクノで、ディスコは大騒ぎなのである。

 かつてユーロビートやロックを愛聴していたひとまでが、テクノを聞く時代である。
バブル経済の崩壊は、ディスコ愛好者の指向性までを壊滅してしまったようだ!。
今夜テクノが、アナタを欲情させる。
ベッドルームでも愛して欲しい、テクノです。

宇野正展(NOBBY STYLE)

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