1992年6月25日木曜日

U96 「Uボート」


 “Das Boot"の最初のリリースでハンブルクのDJ.Alex Christensen(24歳)通称U96は、すぐにMedia Control Chartsの上位に躍り出た。“Das Boot"はそもそもジャズ・ミュージシャン、Klaus Doldinger(Passport)の手による'Bavarian film'提供の同名映画“Das Boot"のサウンド・トラック用に書かれた作品である。

 U96の'91年版、テクノ・ヴァージョンはマイケル・ジャクソンさえも押さえNo.1となり、既に6週間に亙ってその座を維持している。シングルはゴールド・ディスク(25万枚)に輝いた。

 このU96の成功は歴史の流れを変え、ドイツ音楽産業の"ルール”にいくつかの疑問を投げかけた。

――“Das Boot"は7インチではなく、12インチ、もしくはCDマキシ・スタイルのみで発売された最初のNo.1ソングである。

――“Das Boot"は初めてのNo.1テクノ・ソングである。

――“Das Boot"はプロモーション・ビデオのない作品だった。つまり、Tele5やMTVといったメディアのサポートを受けていない。

――“Das Boot"は最初ラジオでオン・エアされなかった。なぜなら、ラジオ局のプログラム戦略と相容れなかったためである。

 次なる成功のため、第2弾の12インチ、CDXにU96はJFKを艦内に引きづり込んだ。"I wanna be a Kennedy"はまたしても、折り紙つきのテクノ・サウンドだが、今回は相当ヘヴィで、ありきたりのチャート・ミュージックに接近してはいない。DJや予約の情況から判断しても、これも又、100%大ヒット間違いない。

 5月初旬にUボート、タイプU96は新たな航海に出る。同名シングルの旧ヴァージョンのヒットに始まり、U96のデビュー・アルバムはリスナーを幾千もの素敵な深海のミステリーの世界へと誘って行く。


COME 2 GETHER
 U96への搭乗式典の始まりだ。グロッケンシュピールが伝統的なハウス・ビートを奏でる。“Come 2 gether"と女性Voは歌っているけれどU-Boatの座席はプレミア付きだ。

DER KOMMANDANT(The Commanding Officer)
 何事も起こらない船内。"これからの長い航海”しかし突然騒ぎが巻き起こる。"どうしたんだ? 指揮官はどこだ?"無線とモールス信号のノイズが、シンセ・ヴァイオリンの穏やかな旅を妨げる。

NO CONTROL
 U96は静かな海をゆったりと航行して行く。出所不明の無線がきこえるが、他に目につくものと言えば海の無限の拡がりだけだ。グロッケンシュピールの音が再び楽しげに響いてくる。

ART OF U96
 船上のロマンティックな憩いの時。雨音が静かに船内に響き渡り、ピアノの音が愛を暗示し、空はヴァイオリンの音色に満ちている。

I WANNA BE A KENNEDY
 アンビエント・ミュージックとJohn.F.Kennedyがどっしりと海中を航行し、魅惑的な女性Voと静かにランデヴーしていく。

AMBIENT UNDERWORLD
 クラシック・ハウス・パーティが催されている。“Give Me A Beat Sucker"という声と、ハウス風キーボードがスピーディで、心地良いビートと共に再び響いている。ソウル風のGoGoダンサーは"Get Crazy,Get Busy.Let the Music Take Control”なんて言っている。

SPORTY ANIMAL-LOVING EXTROVERT
 DJ U96の強烈なビートに、少々毛色の違ったサウンドが加わる。エンジン・ルームは全速力で航行させて、ノイズはメチャクチャだ。ラジオは壊れ、ザーザー、ガーガー鳴り続けている。無線は混信し、U-Boatは浮上する。

SONAR SEQUENCES
 海はアウトバーンへと姿を変える。クラフトワークが乗り込んだのか、少なくとも彼らのキーボードが船内にあるみたいだ。長い間ではないけれど、U96のサウンドの中に居場所を見つけ印象的なサウンドを奏でている。

 突然の攻撃、船体は吹っ飛び、U96は潜水し、水中できしみをあげている。“Das Boot"の'91年旧ヴァージョンは、U96のエキサイティングな旅を終らせる。
 乗員は満足げに身をまかせる。

 アルバム“Das Boot"、そして2枚のマキシシングルは古巣である、ハンブルク、アルトナの“Matiz"スタジオで制作された。Hayo Panarinfo , Ingo Hauss,Helmut Hoinkis,そしてもちろんU96ことAlex Christensenによるプロデュースチームは、一月近くカンヅメになり、真険に作業に取り組み、最高の結果を生み出した。信じ難いほど短期間で、彼らはアルバム制作に成功し、テクノ・シーンの最高峰に君臨するのみならず、ハウス・アンビエント・ミュージックに影響を与えるだろう。

 “Das Boot"はアルバムにおいても、最初にチャート・インしたテクノ作品として、ドイツ・ポップ界の歴史に名を残すチャンスを持っている。

('92年2月オフィシャル・バイオグラフィより)